ビルボードライブとNTT DOCOMO Studio & Liveが共同開催する新企画【Live Heatseekers】が始動。その第一弾として、チョーキューメイによる初のビルボードライブ公演が決定。この企画は、急上昇中のネクストブレイク楽曲が分かるチャート“Billboard JAPAN Heatseekers Songs”から、まさにネクストステップへと駆け上がろうとしている注目アーティストが出演。2020年に結成されたチョーキューメイは、1stフルアルバム『するどいささくれ』の収録曲「貴方の恋人になりたい」がTikTokを中心にバイラルヒットを記録。日本のみならずアジア規模にまでリスナー層を広げ、同チャートでは通算5回の首位を獲得している。今回はメンバーの麗、藤井ごん、空閑興一郎にインタビュー（れんぴは都合により欠席）。「貴方の恋人になりたい」の制作エピソード、最近のライブでの手ごたえ、ビルボードライブ公演への意気込みなどについて語ってもらった。（Text：森朋之 / Photo：辰巳隆二）

「貴方の恋人になりたい」は“アルバムのなかの1曲”という感じだった

――昨年、「貴方の恋人になりたい」がバイラルヒットを記録し、チョーキューメイの知名度はさらに高まりました。

麗：スタジオでアレンジしたときのことを覚えているんですけど、最初は上手く形にならなかったんですよ。

空閑興一郎：サビのアレンジが決まらなくて「1回寝かせよう」ということになって。正直、そのときは「このまま忘れそうだな」と思ってました（笑）。

藤井ごん：そうだね（笑）。

麗：その後、アルバム（『するどいささくれ』）を作ることになって。曲数が足りなくていろんな曲をかき集めているときに、「『貴方の恋人になりたい』も入れよう」という話になったんですよね。サビを横揺れのリズムにして、〈恋に落ちている〉って歌ってみたら、「いいんじゃない？」って。すごく簡単なリフレインなんですけどね。

空閑：しかもBメロとサビのメロディが同じなんですよ。1オクターブ上げてるだけで。

――確かにシンプルな構成ですよね。曲の後半、サンバ的なリズムが入ってくるのも印象的です。

麗：「最後のサビのアレンジ、どうする？」って話してるときに、空閑がサンバっぽいリズムを叩いて。

藤井：いきなりね。

空閑：ちょっとふざけて叩いたんですけど、れんぴがキメのフレーズを即興で弾いて……。

麗：「お、いけるじゃん」ってなりました（笑）。曲の雰囲気にも合ってたんですよね。恋してる感じというか。

――片想いの歌ですからね。

麗：そうなんです。誰もが自分の人生のなかで片想いを経験したこともあるし、「この人、私のことどう思ってるんだろう？」というモヤモヤする時期ってあるじゃないですか。そういう気持ちをその状態のまま保存したというか。

空閑：真空パックだ。

麗：私にとっては「この気持ちを残しておきたい」という備忘録みたいなものなんだけどね（笑）。曲を聴いてくれた人から「片想いしてるときによく聴いてました」とか「これから好きな人に告りに行ってきます」みたいなコメントをもらうこともあって。恋応援ソングみたいになってます。

――「貴方の恋人になりたい」はまずTikTokなどのSNSで拡散されました。

藤井：最初はそこまで聴かれてなかったんですよ。

空閑：『するどいささくれ』の収録曲だと「おやすみパパママ」「3月の花嫁」がよく聴かれていて。

藤井：「貴方の恋人になりたい」が聴かれるようになったのは1年後くらいですね。

麗：そうだね。「いい曲だな」とは思ってたけど、私たちにとっては“アルバムのなかの1曲”という感じだったので、たくさんの人に聴かれてびっくりしました。

藤井：ライブのお客さんもどんどん増えて。「貴方の恋人になりたい」を演奏すると、みなさん手拍子してくれたり。

空閑：イントロが始まった瞬間、みなさんの顔がパァッってなるんですよ。「来た！」みたいな。

――その後にリリースされた「故のLOVE」「PRIDE」「snowspring」などもスマッシュヒット。音楽性の幅がどんどん広がっていますね。

空閑：そうかもしれないですね。麗の歌の幅もすごく広いんですよ。「こういう歌い方をしてみたいんだけど」と言われることもあるし、こっちから「この曲はこんなふうに歌ってみたら？」と提案することもあって。そもそも麗が作る曲もバラエティに富んでいるし、いい意味で素直じゃないところがある気がして（笑）。転調も多いし。

麗：確かにストレートではないかも。メロディの行きたい方向に行くとみんなの演奏も変わってくるし、それに合わせて自然に転調するというか。作り方はいろいろですけど、メロディが大事というのは変わらないですね。

空閑：メロディ、かなり自由だよね。あと歌うのをやめない（笑）。曲のなかでずっと歌ってるから、間奏があまりないんですよ。

藤井：そうそう（笑）。アレンジするときも歌の良さを邪魔しないフレーズを弾くようにしてますね。

空閑：アレンジに関しては、麗がリファレンスを持ってくることが多くて。

藤井：リファレンスの幅もめちゃくちゃ広いんですよ。

――フュージョンやジャズの要素も入っていて。

麗：それはたぶん、れんぴが持ち込んでるのかも。

空閑：自分も好きだけどね。

藤井：僕も少しかじってます。

麗：通ってないのは私だけか（笑）。メンバーのルーツも入ってると思いますね。

――歌詞がアレンジに影響することも？

藤井：どうだろう？　オケのレコーディングのときに歌詞が出来てないこともあるので。

麗：申し訳ない（笑）。こちらから（歌詞について）説明することもあまりないんですよ。「言わずもがなですけど、『貴方の恋人になりたい』は片想いの歌です」みたいな大枠の話をすることはあるけど、解釈は任せているので。「悲しさを表すために、ここでブレイクが必要です」とみたいなこともあるかな。

空閑：歌詞も個性的なんですよ。本人も言ってるんですけど、難しい言葉は全然出てこなくて、歌詞を読めばすぐに理解できるんです。でも、めちゃくちゃスケールが大きかったりして、最後は「なんの歌なんだろう？」とわからなくなったり（笑）。かと思えば「故のLOVE」みたいに「私はこう思ってます！」という個人的な思いだけを歌った曲もあって。

――壮大なスケールのテーマを持った曲もあれば、極めて私的な歌もあるという。

麗：確かにそうかも。私、自然豊かなところに旅行するのが好きなんですよ。海よりも山派なんですけど、自然に囲まれていると細かい悩みはどうでもよくなるというか「ちっぽけだな、俺」みたいになるんです（笑）。そこから日常のコミュニティに戻ると、人から言われたことが気になったり、またいろんなことで悩むモードになって。その違いが歌詞にも出てるのかも。

ライブの質をどんどん高めていきたい

――ライブについても聞かせてください。チョーキューメイのライブはすごくエモーショナルな印象があって。ライブバンドとしての魅力もすごくあると思います。

麗：ありがとうございます。ライブに関しては、お客さんに何かを強制したくなくて。それぞれのスタイルで楽しんでもらいたんですけど、そのためにはまず自分たちが全力で楽しまないとダメだなと思っているんですよね。邪念のないライブというのかな。「こいつミスったな」みたいなことはなるべく考えないようにしていて。

空閑・藤井：ハハハハ（笑）。

麗：もちろん自分のこともそうなんですけどね。たとえば「ギターのチューニング、忘れてた」ってなるとどうしても集中できなくなるので。

藤井：自分も全力で楽しむことを意識してますね。ドラムやキーボードのほうに体を向けて、目を合わせて演奏することもけっこうあって。キーボードのれんぴ、めっちゃ笑ってたりするんですよ。

麗：笑顔がデフォになってるよね（笑）。ライブの経験値も大きいですね。チョーキューメイを組んで4年目なんですけど、少しずつ余裕を持ってステージに立てるようになってきて。

空閑：そうだね。最初の頃はMCもまったくなくて、暗い雰囲気のままライブが終わることもあって。

麗：自信がなくてしゃべれなかったんだけど、「麗ちゃん、おもしろいからしゃべりなよ」って言われて。どうやら（MCを通して）フレンドリーな印象を持ってくれる人もいるみたいなので、しっかり向き合おうと思ってます。

――麗さんが演奏するバイオリンもチョーキューメイのライブの魅力だと思います。

麗：初ライブは2020年9月だったんですけど、その3日前くらいに「そういえば私、バイオリン弾けるな」と思って。小さい頃に10年くらい習ってたんですよ。後半の5年は「練習したくない」みたいになってたし、そもそも楽譜を見ながら演奏することは自分にとって合ってなかったんですけど、バイオリンを弾けることをメンバーに伝えたら、「ライブでもやったほうがいいよ」と言ってくれて。空閑とバイオリン用のピックアップを買いに行ったんです。で、急遽バイオリンをメインにしたインスト曲を作ってライブで演奏しました。それをきっかけに、レコーディングでもバイオリンを使うことが増えて。

藤井：バンド界隈でバイオリンが弾ける人ってほとんどいないですからね。

空閑：しかも麗、ギターを後ろに回してバイオリンを弾くんですよ。その姿がすごくカッコ良くて。

麗：サーキットイベントに出たときなんかも「バイオリン、すごいね」って言ってもらえたり。みなさんに喜んでもらえてよかったです。いちばん喜んでいるのはうちの母ですね（笑）。

――そして5月11日にはビルボードライブ横浜で行われる【Live Heatseekers】に登場します。このライブは、ビルボードジャパンが発表しているチャートがきっかけになっているそうですが、普段ヒットチャートは見たりしますか？

空閑：意識して見ていることはないのですが、目に入るとチェックしてはいますね！

――初のビルボードライブ公演は、どんな内容になりそうか教えてください。

空閑：実はビルボードライブに行ったことがなくて。海外のジャズミュージシャンの公演をチェックして、いつか行きたいなと思ってたんですけど、自分たちのライブが先になりました（笑）。

麗：1日2ステージも初めてだし、普段とは違うセットリストにしたいんですよね。ビルボードライブに合いそうな曲もあるんですけど、そういう曲ってライブハウスではやりづらかったりするんですよ。なので、これを機に呼び起こしたいなと思ってます。

藤井：すごく楽しみですね。ゆっくり食事やワインを味わいながら、自分たちの音楽を聴いてもらえたらなと。

麗：いい演奏をすれば、ワインもさらに美味しくなると思うので。いい時間を提供できるようにがんばります。

――期待してます！　春以降の活動はどうなりそうですか？

麗：ライブの数も増えていくので、1本1本、中身のあるライブを続けていきたいです。

空閑：楽しむだけじゃなくてね。

麗：そう。もちろんすべて全身全霊でやりますけど、次につながる可能性を見せたいし、ライブの質をどんどん高めていきたくて。

藤井：大きいフェスに呼んでもらうことも増えていて。「楽しかった」で終わらせず、次のライブも観たいと思ってもらえるようなライブをやりたいです。

麗：制作もずっとやってるんですよ。これまで以上のクオリティを叩き出しつつ、新しいところも感じもありつつ、これまでの雰囲気も残しつつ（笑）。わがままにがんばってます。

空閑：ライブでも新曲を演奏してるんですけど、お客さんやバンド仲間に「いつリリースするの？」って言ってもらえることもあって。早く出したくてウズウズしてます。

麗：やりたいことに夢中になれてるのもいいなと思います。今を生きてる感じがしますね。